2012年9月15日土曜日

2012.9.5 発行 第 13 号


NPO もやいの新しい門出 NPO もやい代表 松山 毅


皆様こんにちは。NPO もやい代表の松山 毅です。ご承知おきの通り、もう一ヶ月もすると、新しい重度知的障害者ケアホームわいわいていが完成し、10 月初旬には転居も出来る事と存じます。十数年のもやいの歴史を考 えると感慨もひとしおでありますが、同時にこれから新たな歴史を積み重ねていく興奮と緊張も感じております。

この数年来、我々は山中さんのご好意でお貸しくださったご自宅でのケアホームの運営から、より自立的な運 営にすべく、転居先の土地取得から、行政との折衝、建築業者の選定、転居先地域住民との話あいに至るまで、 関係者の協力を得ながら奮闘に奮闘を重ねて参りました。利用者と我々の歴史と未来があるからこそ、慣れない 事にも挑戦してここまでこられたのだと思います。利用者の皆さんが、もやいを終の住処として選んで下さり、 地域生活に順応して下さったからこそ、また、それを利用者のご家族、職員、会員達が支えてきた十数年があっ たからこそ、次の二十年の未来像が描け、そして、その未来をスタートできるのです。私は、この事実において、 自分たちの活動に誇りを持つと同時に、もやいに関わって下さった全ての人々に感謝を禁じ得ません。
しかし、この感謝に満ちた歴史と未来は、同時にらせん状に繰り返される「だれもがともにあたりまえに」へ の挑戦の舞台でもあります。

もやい設立、わいわいてい運営当初、非常に高い無理解の壁が我々の目の前に用意 されていました。何度もぶちあたり、のぼっては落ち、色々な人々の力、支えを借りて、ようやく攀じ登り、関 係機関の理解、協力を得る事が出来るようになりました。新わいわいてい建設に際しても、われわれが飛び越さ なければならなかったハードルは、普通の引っ越しに比べればかなり高いものでした。「あたりまえの生活」と いう我々の志と、委託事業であるという体裁との間を我々は、何度も右往左往しながらなんとか未来の入り口に 立つ事ができました。最初の絶望的な壁と異なり、今回のハードルは幸いにも、こちらの体力次第で乗り越える 事が可能なものでした。しかし、障害者が、まだまだ「あたりまえ」には生活を営める時代には至っていない事 も実感できました。我々の次の二十年の歴史が、このハードルの高さをぐんと低くしてくれる事を期待し、また そうすべく努力をしたいと思います。
この新たなスタートに際し、しばらく滞っていた会報の発行も、石川理事が中心となり動いて下さり、再スタ ートできる事となりました。もやいの歴史と未来を通じ「だれもがともにあたりまえに」を世界に発信できる通 信に育っていければ、大変嬉しく存じます。会報の発行、およびわいわいていの運営について、どうぞ多くの会 員の積極的なご協力をお願い申し上げます。


*やさしいきもちになれるばしょ* 星野 真理子 

こんにちは。はじめましての方もおられます。石川さんの紹介で 2 月からわいわいていで働かせていただいております。星野真理子と申します。よろしくお願いいたします。 病院で精神科中心に病棟とドクターの秘書をしており、その後日本語教師となり石川さんに出会いました。医
療福祉の世界と言語学、どちらもずっと大好きで、いずれ、三障がいをすべて見てみたいと思っていたのでこの お仕事を引き受けました。ただ精神とは多分だいぶノウハウが違う...という懸念は少しありました。しかしこれ2012.9.5 発行 第 13 まで我が人生、心ある人々の中、誠意と真心が通じなかったことはありません。それは人種 文化 背景を遥かに 超えたものでした。今度もきっとそう...と思いスポーツバッグを肩に担ぎ、意気揚々と乗り込みました。果たし て...そうでした!

すべての疎通が取れるわけではありません。でも寒いかなぁ...と肩にお湯をかければ、上手にお湯をすくえな い手で、同じことが返ってきます。慣れない私がバタバタご飯を作っていれば、私がたたむはずのお布団がたた まれています。スタッフもお互いに気遣い合い、フォローしあって毎日が回ってゆきます。まだ私が緊張してい た頃、先輩スタッフが“自然体の星野さんでいいよ、かまえなくていいよ”と言ってくれ、とてもリラックスで きたこともありました。もちろん根気が要求されることもありますが、それはまた私の人生の糧となってくれる でしょう。生活訓練にも役立つのではないかと思っています。わいわいていの生活は規則正しいですし、家事の 練習も出来ますし。

利用者さんの言っている事を鵜呑みにしてはいけない時もあります。「痛い」と言われて、えーっ?!ドキドキ! どうしたの!?と思っても実はそれはそばにいて欲しい時だったりします。やりたくなさそうなときでもこちら のアプローチ次第で気分が急に変わったり...でもこういうことって誰にでもあるのかもしれませんよね。うまく 気持ちがわかった時はとてもうれしいし、工夫するのがおもしろいです。だから私はこれからも、目の前の事象 だけに振り回されず、怖れず慌てず常に平常心で、どうしてこう?ということを考えながら対応してゆく努力を していきたいです。

病院で目指していたのは、QOL(quality of life 生活の質)の向上でした。こちらではどうなのでしょう?バリ バリに事業拡大を目指す病院から私はきました。わいわいていが、みんながワイワイくつろげるおうちを目指す なら、ここで言う QOL アップとはどんなことなのか?いや、そもそもここで目指すのは QOL の維持なのかもしれ ない...未だ模索中です。 利用者さんは、なにをしたら心地よいのだろう?個人的な関心を示され、尊厳を尊重されることは、誰もが嬉し いと思います。
これからもそれを課題に取り組んでいきたいです。

ちょうど私が入職した頃、建て替えが始まっていました。興味津々ワクワクで写真を撮り貯めています。今は ここまで来ました。オープン、楽しみですね!


第16回共生共走リレーマラソン•プレイベントに参加して
わいわいてい 山本哲郎 
8月5日、猛暑の続く日曜日の午後。共生マラソンのプレイベント「東日本大震災を障害者は、どう生きのびたのか」に参加してきた。 宮城県•まどか荒浜の中村正利さんから、「東日本大震災における社会福祉施設の対応と教訓」というテーマでの報告があり、施設長という立場から、大震災での生死の明暗を分けたものは何だったのかを、冷静且つ客観的 に分析し、さらに震災後の再建の取り組みについて貴重な報告をして頂いた。福島県•福祉のまちづくりの会の鈴木尚美さんから、障害を持つ当事者として大震災後、原発事故からの自分 の身を守る為に行った自主避難について体験談を話して頂いた。3週間程の避難中は、慣れたヘルパーさんが同 行してくれたのでどうにか凌げたこと。しかし、緊急時の行政の福祉サービス提供の柔軟性のなさを指摘し、地 域格差のない対応をとの訴えが印象的であった。
わいわいてい管理者の私は、近い将来にあるだろう言われている関東地方の大地震の事を考えてしまう。わい わいていで生活している人の命をどのようにして守ろうか。どこに、どこまで逃げて、生きのびる事ができるの か?
プレイベントの帰り道。わいわいていをどうしようかと考えながら、何か釈然としない気分が襲ってきた。東 日本大震災、地震があり津波があった。そして、原子力発電所の爆発、放射能漏れ、被曝。昨年の大震災後、な るべく考えないようにしてきた事だった。清志郎が唄う「SUMMER TIME BLUES」が微かに聞こえてくるよ うな気がした。どう生きのびるかを真剣に考える時が近づいているのだろうか? 

【わいわいていから避難が必要と判断した時】
避難先として、松山クリニックを目指すと決めています。また同地区にある西大井福祉園、かがやき園、つば さの家、ふれあい作業所等の職員と連携しながら、障害を持つ方の支援が必要となると考えられます。


*「もやい通信」の再開にあたって* 編集責任・石川美知子
NPO 法人「もやい」は 11 年目。通信は当初の頃は、糸数さんが書いた、「わいわいてい」誕生の楽しい物語や、山本さんの「わいわいてい」の生活に、日頃の生活写真、そして理事長松山さんの心情などスタートらしい夢あ ふれる風景が映し出されていました。スタッフに支えられ利用者手の皆さんの生活ぶりも安定していきました。
しかし、いつの頃からか理事会内部の緊張も緩み、通信発行が滞ってしまいました。また、近年はスタッフ 態勢や、利用者の病気、建物の老朽化等大きな困難問題にぶつかり、それを越えることに追われて通信にまで及 ばないできたのが率直な経過だったように思う。理事でスタッフでもあった糸数さんが沖縄へ去り、オープン以 来の利用者も去り、賑やかで自由闊達な二人の欠落は大きな喪失感にもなったように思う。

現在、新しい「わいわいてい」での生活が始まろうとしている。新しく迎えた利用者やスタッフも含め、新しい 感性を大事にしながら、新しい地域で今までのように普通に生活していくためにも、心の発信の軸たる通信を再 開させたいと思う。
特別の気負いはない。
ともすれば縮小気味で守りに入りがちな活動を発足当初の夢をもう 1 度思い起こし、もっと伸びやかに広がっ ていくものしたい。「もやい通信」が会員同士の本音のコミュニケーションの場、また相互に支え合いそして新 しい発想での活動などを生み出す媒介になれればという思いです。
組織は常に原点に返って再生していく中で生き生きと機能する。しかし、それは、同じ繰り返しではなく、ぶ つかったものがあればその原因を克服していくことを通してであろう。

地域で誰もが共に普通に生きていける、そんな環境作りは、触れ合いの中で理解して貰いながらでしかできな い。一人一人が尊厳を持ったかけがえのない人間であると言う民主主義の基本を、小さな地域コミュニテイ作り を通して実践しているといえよう。幸い、新しい地域の自治会には理解を示してくれる方々が。そんな方々への 働きかけで新たな関係の創造を。また、それ以上に日常の当たり前の関係が・・・。ぶっちゃけて言えば、A さ んに会いたい、B さんと遊びたい・・・そんな集まりで何かしたい。それを作る媒介にこの通信を使ってくださ い。

先日、土曜日に、「わいわいてい」に入り、Y さんと、外で食事をし、公園で休んだ。Y さんからは、自然に歌 が。私も昔の唱歌を・・。彼女は手を羽根にして飛ぶかのように大きく動かした。カラスが頭上で啼いたからと いってそんな表現は出ない。豊かだ・・。「癒し」という言葉が流行ってるが、一緒に触れ合いたい、触れ合っ て欲しいと思う。変な世間の柵に縛られてない彼らこそ、時にそんなものを発揮する。 会員の皆さん、「新わいわいてい」に寄ってください。特に、土曜、日曜のゆったりした時に。ボランテイアで、 ただ、友人として関わってください。一緒に歌ってください。遊んで下さい。お食事してください。 そして、そんな時の思い、体験で発見した事を投稿してください。 会員同士のコミュニケーション、そして地域啓蒙であるこの通信を通して活発に交流していきたい。特定の人た ちが発するのでなくどんどん広めていきたい。周囲からの投稿も期待したい。

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朝日新聞夕刊(8,27):話題の映画「普通に生きる~自立をめざして」に注目!!施設反対運動に一石を投ずる。重度心身障害者 の日常のドキュメンタリー。静岡富士見市の施設「でら~と」の5年の記録~障害者の笑顔が地域の人の心開く。

イベント情報:10 28 日(日)
16 回共生共走 5 時間リレーマラソン~ できるだけ皆で参加したい。舞台もあるし。
一緒に楽しもう。出会いも大切に。 ♪♪♪♪
当面の予定:「わいわいてい」関係 「新わいわいてい」建築完成は 9 月末。
内覧会・104日 午後2~7時。 引越し・10 6 日(土)午後。 スタート・10 6